12月 14, 2019

シークレット サンタ

アメリカで生活に困っていそうな人に20ドル札を渡す「シークレット サンタ」という人たちがいる。そんなお話をある方からお聞きしました。

始めた人はアメリカ人のラリー・スチュワートさん。1979年~2006年まで27年間その素性を隠しシークレットサンタを続けたそうです。なぜ20ドル札なのか?話は彼の若い頃にさかのぼります。

スチュワートさんは、若い頃職を失い、ある日空腹に耐えられずお金を持たないままレストランで食事をしてしまったそうです。帰り際、お金を払うふりをしてレジに行こうとすると、店長が言いました。「20ドル、落ちてましたよ」。彼は、心の中で「よかった」と思い、そのお金で食事代を支払い、店を出ました。外には白い雪が舞う、クリスマスの夜のことでした。

その後会社を興したものの、何をしてもうまくいきません。そんなある日、彼は銀行強盗を思いつき、町の銀行に出かけます。

その銀行の窓口でふと見かけた子供の姿が彼を思いとどまらせました。目の前で女の子が20ドル札を窓口に差し出していたのです。彼はあのレストランでの出来事を思い出しました。「あの時の20ドル札はもしかして…」と、彼は考えたのです。

店長は自分にお金がないことを知っていたんだ。スチュワートさんは、その時「人に施しを与えることが、自分も幸せになり、他の人も幸せなる」ということに気づいたのです。
そう思うと、彼は銀行に残っている貯金を下ろし、人々に20ドル札を配って歩くようになりました。すると次第に事業も上向きになり、生活も豊かになっていきました。それでも20ドル札を配り続け、27年間になんと1億8千万円も配り続けたそうです。

でも、残念なことに、彼は2006年に食道ガンで余命1ヶ月の宣告を受けました。そこで、彼は今まで明かさなかった自分の思い、自分の素性を告白する決心をしたのです。「人を幸福にする事で自分も幸せになれる。だからサンタの活動を続けていた」、スチュワートさんはそう告白します。

活動から28年目のクリスマス、彼はこの活動のきっかけとなったレストランの店長に会いに行き、「あの時あなたが20ドルを差し出してくれなかったら、私は大きな過ちを犯していました…」と、その時のお礼として1万ドルを手渡しました。

するとその店長は「クリスマスは誰もが幸せになれるんだよ」と惜しげもなく貧しい人を助ける施設に寄付をしたのです。この店長こそがシークレットサンタの生みの親だったのでした。
2007年1月に58歳という若さでこの世を去ったスチュワートさんでしたが、彼の意思を引き継いだ活動が今でもなされているそうです。「喜んで与える人を神は愛してくださる」と聖書には記されています。今もシークレットサンタはどこかで、貧しい人々に20ドル札を配り続けていることでしょう。

※2009年に夢企画・吉田誠治兄からいただいたメールを元に再構成いたしました。